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できるところから一つずつ

できるところから一つずつ

2019年

コスモス1月号

ドラマでは何度も見たる腹腔鏡手術を今朝は息子が受ける

手術受けその翌日に退院す 次男マイナス悪性腫瘍

弟に触発されて兄が受く早期発見のための健診

設定をまめに切り替へ自在なり心の中のタイムマシーン




コスモス2月号 (桑原正紀選)

大麻所持合法化より二週間広告メールが今日も届けり

「元気がでる」「痛みがとれる」と喧伝し大麻商戦スタートを切る

「国外での大麻の所持も違法です」在留邦人向けのお知らせ
         (お知らせ に 傍点)
現在の悩みは裡に留めおき過去になるまで猫にも言はず

〈やまひだれ〉は掛布団なり 風邪ひきて寝込む私はきつと〈丙〉の字


コスモス3月号 (小島ゆかり選)

這ひ這ひのコツのつかめぬみどり児が進まむとして後退(あとずさ)りする

歓びの色に輝く日照り雨一粒づつに虹を宿して

銀杏降る朝の多磨墓地 宮夫妻の「鎮魂之碑」をたづねあてたり

父方の祖父母の墓より徒歩五分 宮ご夫妻の「鎮魂之碑」は


コスモス4月号  (影山一男選)

歌会を立ち上げましし先輩の置き土産なり〈うたの火種〉は

白き灰被せて燠を保つごとカナダの〈うたの火種〉を護る

歌会(うたくわい)に在籍したる述べ人数四十六名 多く個性派

金柑の甘露煮一つ食べ終はり自分でたてるおうす一服  (おうす に傍点)



コスモス5月号

暮れきらぬ東の空にほの白きスーパームーンがおごそかに在り

「大いばりしている月」と山の上のスーパームーンを夫が評せり

ベランダに毛布と椅子を持ちだして皆既月食はじまるを待つ

一部始終を見逃すまいと待ち構ふ スーパームーンの皆既月食

日の暮れて赤味帯び来し満月がゆつくり欠けてしばし消えたり



コスモス6月号
   年収欄

メトロノームのアンダンテよりやや遅し七十八歳わたしの歩調

まだ父母の遺品整理を終へぬうち自分が老女になりてしまへり

丸味ある太目の文字で記入さる父の遺しし税申告書

亡き父の七十代の年収欄見ぬやうにして破き棄てたり

今日よりは普段使ひに下ろすべし母の遺しし九谷の湯呑み




コスモス7月号  (影山一男選)

平成をずつとカナダに暮らし来し我の日本はいまだに「昭和」

新元号「令和」の二文字何回も墨書してみる馴染まむとして

RともLとも違ふ日本語のら行で始まる元号「令和」

散文も美しく書く旅人なり 「梅の宴の序」を読み返す



コスモス8月号

二百人の国際チームが成し遂げぬブラックホールの影の撮影 
  
ブラックホールの周囲に光るガスの輪は写真なれどもまばゆく光る

北斗星カナダの空に高く在り 日本は天皇ご退位のころ

追ひこされ追ひこされてのゴールなり市の「歩く会」十キロ部門



コスモス9月号  (小島ゆかり)

四百回あまり続きし歌会が今年の末で解散となる

英語圏で短歌の話ができる会「もつと大事にすればよかった」

残り火を掻きたてるごと企画する自宅参加のメール歌会を

「今年こそ最後のチャンス」と計画す子の妻アンとのアメリカ旅行

冗談に言ひだしたるが実現し明日よりアンとの四泊旅行



コスモス10月号

入院を一斉メールに伝へ来てそれきり途絶ゆ友の発信

仲間うちに憶測・噂飛び交へり連絡つかぬ友を巡りて

ベランダの手摺りにとまるベニマシコ声透らせていくたびも鳴く

ベランダに来てはさへづる鳥の声の録音データをスマホに残す

スマホより流れる鳥のさへづりに近くの枝のマシコも歌ふ

註 ベニマシコ = スズメ目アトリ科の鳥のうち羽色が赤い種類の総称。大きさ・形はスズメに似る。羽色は暗紅色で美しい。北地に多い。(広辞苑より)



コスモス11月号(影山一男選)

立秋の風になびける萩に咲き見え隠れする小さき初花

享年のままにとどまる母の齢今は我とは五歳のちがひ

家族みな去りて独りの晩年の母の〈がまん〉が今ならわかる

人麻呂の歌を読みたる若き日の夫に貰ひき日向黄楊櫛

マンションの屋上に出て待ち構ふ十キロ北の浜の花火を



コスモス12月号 (小島ゆかり選)

たんぽぽの花の終りし草叢にサッと消えたり小さき黒栗鼠

振り向けるリスの口よりはみ出してふわつと白したんぽぽの絮(わた)

ひと群れのまたひと群れの雁が飛ぶこの秋初の朝霧の上

「よくもならず悪くもならず」と伝へられ友の入院百日を超ゆ

若き日の夢の六割ほどまでは達成せしと老友が言ふ



バンクーバー短歌会 一月

「今日もまた酔生夢死の日だったな」晩年の父嘆きゐましき

「疲れると魑魅魍魎が夢に出る」晩年の母嘆きゐましき


バンクーバー短歌会 二月

詠題〈火〉

歌会は四百回目を迎へたり 「火」を題として今日も詠み合ふ

歌会を立ち上げましし高橋さんカナダに〈うたの火種〉くださる



バンク―バー歌会 3月

誘惑は気持ちの隙を突いてくる「ほたるよ、ここの水はあまいぞ」

つもりても淵にはならぬ我が恋は年経て広き湖(うみ)となりたり


バンクーバー 4月
題詠〈水)
ノシャップの寒流水族館に見るすいーッすいッと舞ふクリオネを

翼足で水をかき分け水中をはばたくごとしsea angel は



バンクーバー 5月

水晶の実印三つ父母と姉がのこししわが旧姓の

男の子ゐなくて絶えしわが旧姓名乗る人なく印鑑も捨つ


バンクーバー 6月
詠題「戸」

格子戸をあければそこにありさうな昭和の世界 父母もゐて 

一戸建ての暮らしを離れ十二年 草取り志願し子の家に行く


バンクーバー7月

室外機要らぬエアコン売り出され四年迷ひて五年目に買ふ

エアコンが休憩に入り気づきたりテレビのボリューム高すぎたるを


バンクーバー8月

詠題「花」

認知症の従姉が歌詞を忘れずに滝廉太郎の「花」を歌へり

カノーラの花の黄色が広がりぬ夏空に会ふ地平線まで(Saskatoonにて)


バンクーバー9月

空港に我らと別れ帰国せし母の静かな笑みを忘れず

娘には見せぬ明るき笑顔するクラス会での写真の母は


バンクーバー10月
詠題「青」

海のあをは空の青より濃く深く竜宮城の秘密を護る

青年の抱きし大志きらめきの失せたるのちに〈ぬくもり〉となる


バンクーバー11月 

星々のまたたく中を点滅し近づく光 あれは飛行機

川土手に近き湿地のたそがれを姿は見せぬヨシキリの声
     

バンクーバー12月

ヘアサロンとネイルサロンとスパに行き友はさらりと九十になる 

我よりも年上の方の〈お元気〉に励まされつつ電話を終へる


武蔵野支部歌会三月
孫に出す手紙はいつも「じい」でなく「ぢい」と結びき晩年の父



Gusts 29

“Come again”
she whispered
from her hospital bed.
I held her right hand,
nodding my “yes” again


In a small library,
I happened to find
“the Tale of Genji”;
a complete translation
by Royall Tyler


In the late afternoon sky,
above the snow covered mountains
the Super Moon appeared
vague and whitish
but as MAJESTIC as ever



Gust No.30

It all started
as a joke
but, now, finally
I am in NY
as a solo traveler

In front of
the Tiffany
I took a selfie,
eating a croissant
from a paper bag

New York is
like Tokyo
full of vitality
full of people
and .... so noisy


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